「うん。探ってみた感じだと、確かに霊力がありそうだね。しかも見えるだなんて、逸材だなぁ」
ライアンさんは嬉しそうにニコニコと笑う。
その様子をみて、私は首を傾げた。
「あの、霊力があったとしても、私は退魔師にはなりませんよ?」
「分かってるよ。組織に勧誘しようだとか、そういうつもりはないから、安心して」
「だったら、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「単純に、力を使える人が増えるのがありがたいんだよ。月乃ちゃんは、今にも死にそうな人が目の前にいたとして、自分がその人を助ける力があれば、助ける? 放っておく?」
いきなり突拍子もない質問をされて、私は目を瞬いた。
「状況にもよると思いますけど……助けられるなら、助ける、かな」
「そう、良かった。霊力っていうのは、要するにその助ける力なんだ。僕達の組織は、進んでそういう人を探して助けて回っている。だけど、そうじゃなくても、たまたま見つけた人を助けてくれるのでも構わない。力が使える人が増えると、助けられる人も増えるから」
ライアンさんが言いたいことは、何となくわかった。
だけど、やっぱり釈然としない。
「悪魔を殺すことが、人を助けることになる?」
「そうだね」
「その悪魔が、本当に悪いことをしているかどうかも分からないのに?」
私はライアンさんを睨んだ。
ライアンさんは私の視線を受けて、困ったように笑う。
「電話でも言ったけど、悪魔にも色んなヤツがいる。中にはできるだけ人間と共存しようとしている悪魔もね。だけど、俺達は悪魔を見つけたら一律に退治するようにしている」
「それは、どうして?」
「悪魔が100体いたとして、そのうちの95体はだいたいが何かの悪さをしている。人を殺している悪魔も珍しくない。中には良い悪魔もいるかもしれないけど、それを確かめる術はないし、殺さずに放っておいたら被害者が増えることもある。僕は、自分が悪魔を見逃したせいで、誰かが死ぬのは嫌なんだ」
ライアンさんの言っている言葉が理解できないわけじゃない。
だけど、だからって太陽くんが殺されるのは納得できない。