もちろん、障害が多いのは分かっている。

だけど、それは結局、私と太陽くんの問題だ。

紫苑さんとか、ライアンさんとか、関係のない周囲にどうしてそこまで反対されなければならないんだ。



「例えば目の前に、詐欺師に騙されようとしている人がいる。それを見つけたら、止めるのが良心というものだろう?」

「彼は詐欺師じゃあありません」

「詐欺被害にあっている人は、だいたいそう言うよね」



とりつく島もない。やはり無駄だったのかと、小さく息を吐く。



「たとえ夢魔が君を本当に好きだったとしても、悪魔と人間は結ばれないよ。君は知らないかもしれないが、悪魔には寿命がないんだ。人のように見えても、老いることはない。彼らは人間じゃあないんだよ」



ライアンさんが私を諭すように言う。



「そんなの、知ってます。全部教えてもらいました」

「夢魔が君に教えたの?」

「はい」

「それでも君は、夢魔に会いたいって?」

「はい」



電話の向こうでライアンさんが低い声で唸って、それから大きく息を吐いた。



「僕は悪魔を狩る者だよ。長年悪魔と接していたら、彼らの中にも色んな性格のヤツがいるって知ってる。だけど、基本的に悪魔は人間に害しか与えないんだ。その夢魔だって、君に対しては親切だったかもしれないけど、君以外の女性から精気を奪っているはずだよ。そして、その彼女達に対しても紳士的なふるまいだったとは思えない」

「私と会う前に、他の人から精気を集めていたのは知っています」

「君と会ってからもだよ。夢魔が力を維持するには、一人の女性の精気だけじゃあ、とても足りないはずだから」



私に隠れて、他の女性と関係を持っていたはずだとライアンさんは言いたいのだろう。



「全部を知ってるわけじゃないですけど、それは多分無いと思います。夢魔が言うには、私は霊力があるとかで、精気が人よりもだいぶ濃いって。だから、他の人から精気を集めなくていいと言われました」

「は? え、待って。君、霊力があるの?」



驚いたような声でライアンさんは言った。



「それが本当なら――ねぇ、電話じゃなくて、直接会えないかな?」

「直接、ですか?」