名刺を手に私は迷う。
この人は太陽くん敵対していて、太陽くんの命を狙っている。
もし、私が何か話すことで、太陽くんの居場所がバレて殺されることになったら?
だけど、もう一度太陽くんに会える可能性なんて、他にない。
名刺を手に散々迷って、私は結局、ここに書かれている連絡先に電話をかけた。
コール10回。なかなか通話に出ない相手に焦れていると、ようやく通話が繋がった。
「Hello?」
ひぇ、英語!? そっか、外国の人だったし、英語なの!?
あれ、でも、日本語ペラペラだったよね。日本語で話して大丈夫!?
「Hello. Are you there?」
「あ、あの、もしもし! いきなりお電話すみません。 ブラックさんですか?」
慌てて日本語で話しかけると、少しの沈黙。
「――はい、僕はライアン・ブラックです。あなたは?」
「えっと、私、雨夜月乃と言います。前に、あなたに名刺を頂きました」
日本語が返ってきてホッと息を吐く。
「ああ、そうだったんですね。お電話をありがとう」
電話越しに聞こえる声のトーンは柔らかい。
よく知らない相手から電話されて、怒っている様子はなさそうだ。