始めは本当に興味本位だった。

俺を嫌がる女の子が珍しくて、反応が新鮮だから、からかって遊んでいた。

精気が濃いのもエサとして丁度良かった。

セックスなしで、キスだけで満腹になれるなんて手軽で良いとおもった。

本当にそれだけの感情だったんだ。



だけど、いつの間にか月乃ちゃんと話すのが心地よいと感じるようになっていた。

彼女は俺の暗い部分を知っているのに、俺から逃げない。

試すように脅しても、過去を話しても、結局は態度を変えなかった。



なにも取り繕わない、そのままの自分で良いんだと、生まれて初めて肯定された気分だった。

好きだと言われて舞い上がったけど、気持ちをすぐに受け入れることができなかった。



恋愛なんてくだらないと、ずっとそう思っていたのだ。

なのに、気がつけば俺の方が月乃ちゃんのことを気にするようになっていた。



ちょっとした仕草が可愛く見えて、理由もないのに触れたくなる。

空腹でもないのに会いたいと思うし、ずっとそばにいてほしい。

もう彼女以外の精気なんて食べたくない。



月乃ちゃんに惹かれていると気がついて、俺はショックを受けた。



月乃ちゃんを好きになっても、この気持ちが叶うことはないのだ。

だって、俺はもう人間じゃあない。どれだけ望んでも、彼女と一緒に生きることはできない。

これ以上惹かれてはいけないと理性では分かっていても、気持ちがついていかなかった。



会いたい。触れたい。――離れたくない。

月乃ちゃんを、俺だけのものにできたらいいのに。

だけどそれは叶わない。



どれだけ好きでも、俺は彼女を幸せには出来ない。

生きる世界が違うのだから。

だからこれ以上好きにならないうちに、手遅れにならないうちに、手放そうとしたのに。


「私は、太陽くんのことが好きだよ。だから、一緒に堕ちよう」


笑って言ってくれた言葉に、心が震えた。

そうやって、月乃ちゃんは垣根を簡単に超えてくる。

彼女の言葉が信じられないくらい嬉しかった。

俺がたとえ悪魔でも、月乃ちゃんとなら、幸せになれるんじゃないかって夢を見た。



だけどそれは結局、ただの夢に過ぎなかったんだ。


俺は悪魔だ。だから、彼女と一緒にはいられない。