「ぐっ、紫苑さん!?」
「お前はまだ産まれたばかりのヒヨコだ。人間ひとりを守る程度の力も持たないで、生意気言ってんじゃねぇよ」
紫苑さんが、赤く目を光らせて私を睨む。
その瞬間、私の身体は金縛りにあったみたいに、ぴくりとも動かなくなった。
「っ!! 月乃ちゃんに手を出すな!」
「手を出されるのが嫌なら、力づくで止めて見せろよ。その力もないくせに、どうやってコイツを連れ歩くつもりだ。他の悪魔や退魔師に狙われて、守り通すことができんのか?」
紫苑さんがゆっくりと私に向かって歩いてくる。
拘束された太陽くんの横を通り過ぎ、ベッドに座った状態で動けない私の喉に触れた。
「お前も分かっただろう、人間。悪魔の側にいるってことは、いつだってこういう危険があるってことだ」
私の首を絞めるみたいに、紫苑さんの両手が首にかかる。
その間、私は何の抵抗もできないで、声のひとつも発せなかった。
「止めろ!!!」
「止めてほしかったら、どうすれば良いか分かるだろ?」
紫苑さんの言葉に、太陽くんがぐっと眉根を寄せた。
それから、苦しそうな顔で私を見つめる。
「橙、諦めろ。俺達は悪魔だ。人を不幸にすることしかできない、悪魔なんだよ」