絶望に染まった顔で、太陽くんは別れを告げた。

私から離れていくその手を、私はとっさにつかみ取る。


驚くように震えた太陽くんの手のひらを、強く握った。



「勝手なことばっかり言わないで!!!」



気がつくと、私はそう叫んでいた。



「私は、太陽くんが好きだって言った! 未来に出会う誰かじゃなくて、今ここに居る太陽くんが好きなんだよ!!」


私と別れて、それで、太陽くんはどうするのか。

生きるために見知らぬ女の人を抱くのか。それとも、誰も抱かずに死ぬの?

どっちを選んでも、絶対に嫌だ。許せない。



「太陽くんはそれでもいいの? 私が別の人と結婚して、二度と太陽くんと会わなくて、それでもいいの!?」

「嫌に決まってるだろう!!」



太陽くんは声を荒げて怒鳴った。


「君を手放して、俺が平気だとでも思う!? 君以外は欲しくないのに、生きるためには吐き気を堪えながら他の女を抱かなきゃならないんだ。冗談じゃない!!」

「だったら、サヨナラなんて言わないでよ!! 私を置いて、どこかに行こうとしないで!」



私が叫ぶと、太陽くんは私の手を払って、反対に強い力で腕を掴んだ。



「じゃあ、君は俺と一緒に来てくれるの!? 一緒に老いることもできない、子供も望めないし、まともな生活だってきっと出来ない。どう考えても君を幸せになんて出来ない俺の側にいて、一緒に堕ちてくれるって!?」



ぎりぎりと掴まれた腕が痛い。

苦し気に言葉を吐き出す太陽くんを見て、すとんと覚悟が決まった。



「いいよ」

「……え?」

「いいって言ったの。高校を卒業して太陽くんがどこかに行くなら、私も一緒に連れて行って」



言った瞬間、紫苑さんに言われた言葉が脳裏をよぎって、ぎゅっと胸が締まる。


――本当に寿命が尽きるまで側にいれたヤツは一握りしかいない


今はよくても、いつまで気持ちを抱き続けられるのか。

未来も救いもない、きっといつかは辛くなる、そんな茨の道だ。

それでも私は、そこに太陽くんがいるならば、その道に足を踏みいれたい。