ぽたぽたと、雨が降ってきた。
冷たい水が肩に落ちる。その気持ち悪さが、今は心地よかった。
それでも、動く気になれなくて、私はベンチの上で膝を抱えて蹲っていた。
「見つけた! 何やってんだよ、こんな場所で!!」
切羽詰まった声が聞こえて、雨が遮られた。
見上げると、肩で息をした太陽くんが、私に傘を差してくれている。
「太陽くん……?」
「太陽くん?じゃない。俺の家に来るって言ったのに、いつまでたっても来ないし、何度も電話したのに出ないし!」
太陽くんは苛立ったような口調だ。
勝手をした私のことを怒っているのかもしれない。
けれども私の顔をみると、彼はぎゅっと眉を寄せた。
「何かあった?」
私を気遣うような声。
だけど、私はいい言葉が浮かばなかった。
「誰かに何かされた?」
続けて問われた言葉に、首を左右に振る。
何かをされた訳じゃない。ただ、現実を知ってしまったのだ。
「紫苑さんに会ったの」
私の言葉に、太陽くんは顔を顰めた。
「あの人に、何かされたの?」
「違う。ただ、太陽くんは年を取らないって、教えてもらっただけ」
「…………」
太陽くんはハッと目を開く。
そんな反応をするってことは、きっと太陽くんはそのことを知っていたんだ。
そりゃあそうだろう。だって、自分のことなんだから。