太陽くんの過去を知ってから、太陽くんとの距離が少し近づいたような気がする。
学校ではお弁当を一緒に食べるようになった。
太陽くんはやっぱり私の栄養状態を心配しているみたいで、毎日お弁当を作ってきてくれている。
そのお弁当がまた美味しくて栄養バランスまで良いものだから、本当にすごいと感心してしまう。
「太陽くんって、ほんっと器用だよね。なんでも出来るじゃん」
綺麗に盛り付けられたお弁当を箸でつつきながら私は言った。
「月乃ちゃんは料理、出来ないの?」
「一応、食べられる程度のものは作れるよ。面倒だからあまり作らないだけ。でも、太陽くんの方が上手いと思う」
太陽くんはお弁当を作ってくるものの、それは私の分だけだった。
私にお弁当を渡しておいて、自分はパンを一切れか、あるいは何も食べないこともある。
「食べられないわけじゃ無いんだよね?」
「食べようと思えば食べられるけど、食べる必要無いし、食べたいとも思わないんだ。夢魔になって、身体の作りががらっと変わった感じ。前は好物だったものも、今はあんまり美味しいと思わない」
もし、太陽くんが食べてくれるなら、料理してみようかな……と思ったけど、この分だと作らないほうが良さそうだ。
芋の煮っころがしをお箸で転がす。どう考えても私が作るよりもいい出来だ。
「今は好物とか無いの? 欲しいものとか」
「好物かぁ。あえていうなら、月乃ちゃんかな」
「私?」
「うん。精気って人によって味が全然違うんだ。月乃ちゃんのは特に美味しいから、今の俺の好物は月乃ちゃん」
さらりと言われて、顔が赤くなる。
そっか。好物かぁ、そっか。
照れる気持ちを隠すように、綺麗に煮られた子芋を口に放り込んだ。
やっぱり美味い。