「スッキリしたよ。殺したことを後悔したことなんて一度もない。母親(あのひと)は俺を愛しているなんて言っていたけど、俺は欠片もあの人を愛していなかった。実の親を自分が自由になるために簡単に殺せた。――きっと俺は、悪魔になるのに相応しい奴だったんだろうよ」


そういって、太陽くんは自嘲した。

太陽くんの話を聞いて、私は胸が痛くて仕方が無かった。



「月乃ちゃん、なんで泣いてるの。俺に同情した?」



この胸の痛みは、同情なのだろうか。



「分からないよ。でも、もっと早く太陽くんに会えていれば良かったのにって思ったの」



私には、人の心の色を見る目があった。

太陽くんがどれだけ良い子を演じていたとしても、私だったら、太陽くんが抱えている闇に気付けたはずだ。



「私、こんな力があるのに、なんの役にも立ったことが無い。お父さんが罪を犯していたことにも気づけなくて、お母さんが病んでいくのが分かったのに止められなかった。だけど、もし、その時の太陽くんに会えていたら、少なくとも太陽くんが何かを抱えていることに気付けたはずなのに」



だけど、私が太陽くんに会ったのは今だ。すべてが終わってしまった、今なのだ。


私がぎゅっと拳を作ると、太陽くんははぁと息を吐いて、ぽんと私の頭の上に手を置いた。



「なんの役にも立たないなんてことは無いよ。少なくとも、俺は今、月乃ちゃんがいてくれて助かってる」

「私、何もできてない」

「そんなことない。月乃ちゃんの精気は人より濃いって言ったでしょ。俺さあ、母さんのことがあったから、あんまり女が好きじゃないんだよね。それでも精気は必要だし、食事の為に適当な女の機嫌を取るのが苦痛で仕方なくてさ。だけど、月乃ちゃんから精気を貰っているお陰で、その苦痛から解放されたんだ。それだけでもかなりありがたいんだよ」


太陽くんの言葉に顔を上げる。

困ったような顔で私を見つめる太陽くんと目があった。