すぐに買い物に行く気になれなくて、私は近くにあった公園に立ち寄った。
ベンチに座って、道行く人をぼうっと眺める。
手を繋いであるく親子連れの姿を見つけて、そういえば私にもあんな幸せな時期があったなぁ、なんてぼんやり考えていると、ふっと影がさしこんだ。
「こんなところで何してんの、月乃ちゃん」
見上げると、太陽くんが私の顔を覗き込んでいた。
まさかこんな場所で会うとは思えず、ドクンと心臓が大きく跳ねる。
「太陽くん!? なんでここに?」
「マンション、この近くだし。コンビニに行った帰り」
太陽くんはそういうと、手に持ったレジ袋を掲げて見せた。
それを確認してから、私は慌てて周囲を見回す。
さっきの名刺をくれた外人が、近くにいる気配はない。
「外、うろうろして大丈夫なの? 狙われてるんでしょ?」
「心配してくれてるの? 大丈夫だよ。このあたりには紫苑さんが張った目くらましがあるから。気配を辿られたりはしない」
余裕たっぷりに言う太陽くんだったけど、私は心配で仕方がない。
「でも、偶然会っちゃうことがあるかも。さっき、妙な人がいたの」
「なに?」
「金髪でグレーの目の外人さん。悪魔を探してるって言ってた。心当たりない?」
尋ねると、太陽くんは私の腕を掴む。
「ついてきて。俺のマンションで詳しい話、聞かせてほしい」
太陽くんの気配が鋭くなって、警戒するように周囲を睨んだ。
私は無言で首を縦に振って、太陽くんの後ろについてあるく。
公園を出てしばらくあるくと、すぐに太陽くんのマンションが見えた。部屋に入ると、ソファーに座るよう勧められる。
私が座ったタイミングで、太陽くんは冷蔵庫からお茶を出して、グラスに注いでくれた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
私がお茶を一口飲んだタイミングで、太陽くんは私の隣にドカッと座った。