「ふぅん。他の人に頼んでも良いの?」

「好きにすればいいじゃない。私には関係ない。他の人に頼めるなら私はもう戻って良い?」



そうだ。私には関係ない。

太陽くんがどこで何をしようが、誰と寝ようが、何を考えていようが、関係ない。

胸が騒めいたりしないし、傷ついたりもしない。

太陽くんなんてどうでもいいのに……どうして、こんなに苛立ってしまうのか。



「ごめん、意地悪を言い過ぎた。他の人に頼むなんて嘘だよ。月乃ちゃんが良いんだ」



太陽くんはそう言うと、チュッと私の唇を啄んだ。

驚くくらい優しいキスだった。まるで、拗ねた恋人の機嫌をとる彼氏のようだ。

太陽くんの一挙一動に、私の心は乱される。



太陽くんは嘘つきなのだ。自分を良く見せるために、平気で人を騙せる人だ。

だからきっと、機嫌を取るためのキスなんて簡単にできる。

どうすれば私の機嫌が直るかなんて、お見通しなんだ。



「太陽くんって、ほんとクソだよね。女の敵」

「ここでそういう反応するって、本当に月乃ちゃんは面白いよね。大好きだよ」

「私は、太陽くんなんて大嫌い」



私が睨むと、太陽くんはくつくつと喉を鳴らして笑った。

嫌いと言われて喜ぶなんて、変態なんじゃないだろうか。



「それじゃあ今日も、大嫌いな俺と沢山キスしてね?」