「どうも、ゴキゲン弁当です。お支払い金額は1020円で――うひっ!?」
ガチャリとドアが開いて、中から出てきた人を見た瞬間、営業用の笑顔が悲鳴に変わった。
部屋から出てきたのは、クラスメイトの春日くんだったのだ。
しかも、あろうことか春日くんの上半身はなぜか裸だ。
学校でのさわやか笑顔が嘘みたいに気だるげな表情でドアを開けた彼は、私をみた瞬間に眉をひそめる。
「雨夜さん?」
「かかか、春日くん!? あれ、でも、表札が……」
マンションの表札は、春日ではなく橙木となっている。
それに、春日くんの家は豪邸だと噂を聞いたことがあった。すくなくとも、マンションではなかったはず。
「ねぇ、お弁当まだぁ?」
私が戸惑っていると、部屋の奥から女性が出てきた。
Yシャツ一枚のその女性は、妙な色気をふりまきながら、春日くんの肩に手を置く。