「食べたら? どうせ、今日もロクな昼食を持ってきてないんでしょ」


すすめられて、私はもらったおかずに箸を運ぶ。

卵焼きを口の中に入れると、ほんのりとダシの効いた上品な味がした。



「え、美味しい。すご」

「あっそ。良かったね」

「え、こっちのほうれん草のお浸しも美味しい。太陽くんすごい」



あまりのおいしさに、お弁当はあっという間に空になってしまった。

美味しかった。勉強も運動も器用にこなすと思っていたけど、まさか料理までできるとは。

さすがミスターパーフェクト。この男に出来ないことはないのか?



「ご馳走様でした。すっごく美味しかった!」

「お粗末様」



太陽くんはそういうと、空になったお弁当箱を片付けてくれた。



「月曜から、俺が弁当を持ってくるから」



そう宣言されて、私は面食らった。



「それは、すごく嬉しいけど。でも、なんで?」

「家畜の餌付け」

「は?」



私が目を丸くすると、太陽くんはにっこりと綺麗な笑顔を見せる。



「精気の味って健康状態にも左右されるんだ。月乃ちゃんが粗食を続けて、味が落ちたら困るから」

「なるほど。それで、家畜の餌付け」



美味しいお弁当に、ちょっとだけ感激して損した気分だ。

太陽くんのことだから、どうせそんな理由だろうと思ったよ!



「まあいいや。エサでもなんでも、くれるって言うなら貰うよ」



理由はなんであれ、食べ物に罪はない。

でもって、太陽くんの作ったご飯は美味しかった。美味しいは正義だ。



「ありがとう、太陽くん」

「家畜だって言われてるのに、よく平気でお礼を言うね」

「理由はなんであれ、美味しいものは美味しいし、嬉しいものは嬉しいから」



私がそう言うと、太陽くんはにやりと笑った。



「お礼なら、こっちがいいな」
「へ?」



そういうと、太陽くんはいきなり私の顎を掴んで、唇を重ねた。

突然キスをされて、私は驚いて目を見開く。



「んんんっ!!!」



軽く舌を絡めると、太陽くんは唇を離してくれた。

味わうようにぺろりと唇を舐めてから、満足そうに彼は笑う。



「ご馳走様。やっぱり月乃ちゃんの精気は良いね」

「なっ、ゆ、夢以外で接触禁止だって言った!!!」

「ちょっとした味見だよ。俺もそろそろ、お腹が空いてきたんだ」



太陽くんは、高校生にしては色気のありすぎる笑みを浮かべて、私の耳元でささやいた。



「今夜、月乃ちゃんを食べにいくから」



艶やかな声で囁かれ、私は顔を真っ赤に染めた。