太陽くんに散々精気を奪われて、体調が元に戻るのに3日かかった。

どうやら、精気とやらは時間経過で回復するらしい。

その間、身体が怠かったりいつもよりお腹が空きやすかったりという異常はあったけれど、動けないほどでは無かったので、どうにかいつも通りの日常を過ごした。


太陽くんは、学校では相変わらずだった。

私の命を握っているなんて脅しておきながら、校内では私を恋人扱いする。

あの時の出来事が嘘だったみたいに、いつもと変わらないキラキラした笑顔を周囲に振りまいて、今日もみんなにチヤホヤされているのだ。


「月乃ちゃん、一緒にお弁当たべよっか」


昼休み。キラキラ笑顔を振りまきながら、太陽くんは私にそう声をかけてきた。

私はお弁当派だ。いつも教室の隅の方で、地味仲間の友人と机を並べてひっそり食べている。


「ごめん、太陽くん。私、いつも吉野さんとご飯食べてるから」


太陽くんと関わりたくなくてそう言うと、前の席の吉野さんがビクッと身体を固くした。

吉野さんが、巻き込んでくれるなとの視線を私に向ける。


「あ、あの、月乃ちゃん。わたし、一人で大丈夫だよ? 彼氏さんとの邪魔はしないよ?」


吉野さんは怯えたように太陽くんを見ながら、そう告げた。

クラス内でのヒエラルキーが高めの太陽くんに、私達のような地味な人間は逆らいづらいのだ。


「ほら、吉野さんもそう言ってくれてるから。行こう?」

「え、でも……」

「たまにはいいでしょ? 俺、大好きな月乃ちゃんと少しでも一緒に居たいんだ」


太陽くんが恥ずかしげもなくそんな台詞を言うと、教室内でキャア!という悲鳴が上がった。

何がキャアだ忌々しい。この男は、心の中では周囲を見下している腹黒だぞ。目を覚ませ。

ここまで言われて断ったら、確実に私が悪人にされるではないか。

好奇の視線に耐え切れず、私はしぶしぶ立ち上がる。


「どこで食べるの?」

「二人きりになれる場所。ついてきて?」