「わざわざプリントを届けて下さってありがとうございます。せっかく来てくださったのに申し訳ないのですが、こちらのプリントは、明日、学校で坊ちゃまにお渡しいただけませんか?」
「それは、どうしてでしょうか?」
「坊ちゃまは今、この家を出て一人で暮らしているのです。だけど、どこに住んでいるかは私達も存じ上げていないのですよ」
「え?」
学校に届け出ている住所は、この家の住所だった。
だけど、太陽くんは実際にはこの家に住んでいないらしい。
しかも、家族であるはずの人が、一人暮らし先の住所を知らない?
そんなことがあるんだろうか。一人暮らしをするにしても、未成年が部屋を借りるには、保証人のハンコが必要なはずだけど。
「太陽くんがどこに住んでいるか、お母様も知らないんですか?」
「私は坊ちゃまの母親ではありません、ただの家政婦ですよ。1年前までは坊ちゃまも旦那様とここで暮らしていたのですが、少し前に突然一人暮らしすると言って出ていかれて、今ではすっかり音沙汰が無いのです」
「そう、なんですね……?」
旦那様というのは、太陽くんの本当の親なのだろうか。
だとしたら、そのお父さんも悪魔なの?
太陽くんの家庭環境って、いったいどうなってるの?