太陽くんと関わってから、ロクなことがない。

夢の中の出来事とはいえ、週に2度、食事と称してキスをされる。

それはまぁ、約束だから仕方がない。

だけど、太陽くんはねちっこいのだ。

さっさと食事を済ませればいいものを、耳を撫でたりあるいは身体を触ったりと、細かいところでセクハラをしてくる。

あのねちっこさは太陽くんの趣味だ、間違いない。

もっとあっさり簡単に、さくっとキスをして終わらせてほしい。



迷惑なのは精気の受け渡しだけじゃない。

学校で私は太陽くんの恋人だと周知されるようになった。

そのことは、生徒だけじゃなくなぜか先生も知っていて、それ故に今日、私は厄介事を押しつけられたのだ。


『雨夜さんって春日くんの彼女だよね。申し訳ないんだけどこれ、春日くんの家まで届けてくれない?』


そういって渡されたプリントが、手にしたクリアファイルの中に入っている。

ゆえに私は、コレを届けるために太陽くんの家へと向かっているわけだ。


恋人だっていっても、結局は名前だけだ。

そもそも、学校と夢の中以外で太陽くんと会うことなんてほとんど無い。


先生から教えてもらった住所は、前にお弁当を届けたマンションとは違っていた。

地図をみながらどうにかたどり着いたのは、驚くほどの豪邸だった。

門がついている家なんて都心にあるんだと感心しながら、私は恐る恐るインターフォンを押す。


『はい、春日です』


インターフォン越しに聞こえたのは、女性の声だった。

もしかして、太陽くんのお母さんだろうか。

いやでも、太陽くんって悪魔なんだよね? 悪魔のお母さん? どういう関係?


「あの、雨夜と申します。春日太陽くんがお休みだったので、プリントを届けに来ました」

『まぁ、坊ちゃまの。少々お待ちくださいね』


坊ちゃま? 太陽くんが、坊ちゃま!?

まさかの呼び方に驚いていると、屋敷の中から割烹着を着た50歳くらいの女性が出てきた。