なんでも好きなジャンルを選んでいいということだったので、私は好みのままにホラー映画を堪能させてもらった。
吸血鬼を題材にした和風もので、なかなかゾクゾクして面白かった。
「面白かったー! 奢ってくれてありがとうね」
「どういたしまして。それにしても以外。月乃ちゃん、ホラーとかいけるんだ」
「大好きだよ。太陽くんも平気そうだね」
「しょせん作り物だしね。もっとヤバイ人を知ってるし」
もっとヤバイ人を想像して、私はちょっと顔を顰めた。
「それってもしかして、悪魔のお仲間てきな?」
「そうだね。紹介してあげようか?」
「絶対にいや!」
私がすかさずいうと、冗談だよと太陽くんが笑う。
「月乃ちゃんは美味いから、仲間に紹介するのはちょっとな」
「美味しいって言われても、まるで嬉しくないんだけど」
「そう? 俺的には一番の誉め言葉だよ」
太陽くんはにやりと笑うと、唇をぺろりと舐めた。
その仕草でキスを思い出して、私は思わず俯いて表情を隠す。
「月乃ちゃんのおかげで、ナンパから解放されたから。放課後が好きに使えて楽だな」
「いつもナンパしてたの?」
「だいたい毎日かな。学校周辺で変な噂が立つと不味いから、着替えて遠くの駅まで行ったりして、結構大変だったんだよ」
どうやら、精気を食べるのにも結構苦労があったらしい。
悪魔にも色々苦労があるんだな、なんて人事のように考えていたら、太陽くんは私の顎を掴んだ。
「と言うわけで、改めて今後はよろしくね。大好きな彼女さん」
ひとさし指で唇を抑えられて、私は顔を真っ赤にした。