春日太陽という男は、さわやかな人気者の皮をかぶった悪魔である。


人当たりがよく、人前で笑顔を絶やさない彼の周囲には、自然と人が集まってくる。

たいそうモテる彼は、「軽はずみな気持ちで女の子と付き合いたくない」などと言って女の子の告白を断っていた。

けれども、最近はその断り文句が変わったらしい。



「ごめん。大好きな彼女がいるから、君の気持には応えられないんだ」



それが、春日太陽が告白を断るための、新しい常套句だ。

その大好きな彼女というのが、地味で目立たない雨夜月乃であることは、いつの間にか周知の事実となっていた。


えぇ、月乃ちゃん、あの太陽くんとつきあってるの?

ほら、あれが噂の……。

うそぉ、めっちゃ地味じゃん。ほんとなの?


休み時間のたびに、突き刺さる視線が鬱陶しい。