「なん……で?」

「なんでノートを貸してくれるのかってこと? だって、雨夜さんが倒れたのは俺のせいだし」



春日くんの言葉に息が詰まる。

ということは、さっきのはただの夢じゃあ無かったんだ。

やっぱり、春日くんが私に何かした……?



「春日くんは、何者なの?」

「夢の中でも言ったでしょ? 俺は夢魔だよ。人の精気を食らう悪魔」

「っ! 夢のこと、春日くんも覚えてるの!?」

「当然。だって、あれは普通の夢じゃなくて、俺が作った結界だからね」



あたりまえのように言われて、私は顔が真っ赤になる。



「最っ低。なんで、あんな……キスなんて!」

「キスじゃないよ。あれは食事」



恥ずかしがっている私をからかうみたいに、春日くんは笑う。



「雨夜さん、霊力が高かったから。俺、お腹が空いてたんだよね」



春日くんの声には反省の色が欠片も含まれていない。

食事なんかでファーストキスを奪われるなんて、たまったものじゃあない。