次に気づいた瞬間、目の前に白い天井が見えた。
ここは……保健室?
消毒液の臭いに眉を顰めて、ベッドから上半身を起こす。
壁にずらりと並んだ薬品に、白いカーテンの区切り。パイプベッド。
どうやらいつの間にか保健室のベッドで眠っていたらしい。
ということは、さっきのは全部夢…?
私が首を傾げたその時だった。
「おはよう、雨夜さん」
「ひぇ!!」
すぐ近くで春日くんの声が聞こえて、私は小さく悲鳴を上げた。
慌てて声がした方を向くと、相変わらずの黒いオーラを纏った春日くんが、ベッドの脇にあるパイプ椅子に座っていた。
「かかかか、春日くん、な、なんで!?」
「空き教室で倒れた雨夜さんを保健室に運んだのが俺だから。心配で様子を見に来たんだ」
「空き教室で倒れた?」
そうだ。私、昼休みに春日くんに空き教室に連れていかれたのだ。
そこで倒れて……あれ、じゃあ、さっきのはやっぱりただの夢?
「もう放課後だよ。全然目を覚まさないから、よっぽど疲れているんだろうって、先生が言ってた」
「え、放課後!?」
ということは、私は2時間も授業をさぼってしまったのか。
「はい、コレ。休んでたぶんの物理と数学のノート。貸してあげる」
春日くんはニコニコと笑いながら私にノートを差し出してきた。
どうやら、休んでしまった授業のノートを貸してくれる気らしい。
けれど、私はそれをすぐに受け取ることはできなかった。