「春日くんの性根はどう見ても悪魔だよ。良い人を演じるのは上手いみたいだけど」

「善人だと思われていた方が都合が良いんだよ。ちょっと優しくしただけで、みんなコロっと騙される。人間ってホントにチョロいよね」



春日くんの言葉に、私はうわぁっと顔を顰める。

あんなドロドロしたオーラで善人だとは思っていなかったけれど、思った以上に腹黒い。


「それで、春日くんが悪魔だっていうのは分かったから、私を帰してくれない?」


ここは夢の中らしい。だけど、さっきからちっとも目が覚める気配がない。



「駄目だよ。何のために俺が君をここに連れてきたと思ってんの?」

「えっと、それは、教室ではできない話をするため?」

「違うよ、それは前座。雨夜さんには、俺のゴハンになって欲しいの」



春日くんはそう言うと、ペロリと唇を舐めた。

ゴハン、ご飯。……食事!?



「かかか、春日くん、まさか、人間を食べるの!?」



私はざっと後ずさって、部屋の壁に背中をくっつけた。

春日くんはそんな私をみて、くつくつと喉を震わせる。



「大丈夫、夢魔だって言ったでしょ? 俺が食べるのは人間の精気だよ。血肉や魂を食べる類の悪魔じゃないから、安心して」

「あ、安心なんてできないよ! そもそも、精気ってなに!?」

「ん~説明が難しいけど、要は、快楽を感じていてるときに人間が出すエネルギーだよ」

「快楽!?」