「俺は、悪魔じゃなくなっても、きっと心は真っ黒なんだって思ってた。だって、今までずっと人を恨んでいたから。父さんを軽蔑して、母さんを憎んで、周囲の人間を馬鹿にしてた。悪魔にだって、なるべくしてなったと思ってたんだよ。俺に相応しいって」

「今でもそう思うの?」



尋ねると、太陽くんは軽く首を左右に振った。



「今は、母さんは可哀想な人だったんだと思ってる。あの人は、きっと父さんを好きだったんだ。だけど、心が得られなくて捻じれていってしまった。だからって、許せるわけじゃあないけど」


太陽くんのお母さんは、彼に消えない大きな傷をつけた。

それはとても許せるものじゃないけれど、それでも、太陽くんは少しずつ乗り越えようとしているのだろう。



「全部、月乃ちゃんのおかげだよ。月乃ちゃんに会って、俺は誰かを好きになるって気持ちを初めて知った。幸せで、だけど、すごく苦しくもなる。だから、少しだけ母さんの気持ちが分かった気がするんだ。きっと俺も、月乃ちゃんがいなくなったら狂ってしまう」



太陽くんはそう言って、私の頬に手を当てた。



「ねぇ、月乃ちゃん。ずっと俺の側にいて。君がいるから、俺は前を向いていられるんだ。俺の心が光っているのだとしたら、それは君がいるからだよ。月乃ちゃんがいなくなったら、俺の心はあっという間に暗くなるよ。きっと、前よりも酷い色になる」

「悪魔の時よりも酷い色になるの?」

「そうだよ。絶対にそうなる」