「月乃ちゃん、どうしたの?」
突然泣き出した私をみて、太陽くんが慌てた顔をする。
私はたまらなくなって、彼に向かって飛びついた。
「太陽くん!!!!」
「わっ、月乃ちゃん!」
ベッドの上に飛び乗った私を、太陽くんは抱きとめてくれた。
私はそのまま、太陽くんの胸にしがみついて、子供みたいにえんえんと泣いた。
太陽くんは困ったように笑いながら、私が泣き止むまで背中を撫でてくれる。
やっと落ち着いた私が顔を上げると、太陽くんがくすりと笑った。
「月乃ちゃん、目が真っ赤」
「うん、ごめん。いきなり泣いてびっくりしたよね。でも、なんだか安心しちゃって」
「大丈夫だよ。心配、してくれたんでしょ?」
そういって笑う太陽くんの笑顔は、穏やかで温かい。
外面を良くするための作った笑顔でもなく、どこか悲しそうな暗い笑顔でもない。
こんな風に、春の日の陽だまりのように笑える人だったのだ。
「人間に、戻ったんだよね?」
「うん。もう魔力も使えないし、それになんだか前より身体が重いかな。変な感じ」
「見た目は変わってないけど、でも、雰囲気は変わったかも」
「そう? 何が違う?」
「黒いオーラが無くなったの。太陽くんの心の色、前みたいに真っ暗じゃない」
私がそういうと、太陽くんは驚いたように目を丸くした。
「本当に? 俺の心の色が変わったの?」
「うん。今はほんの少しだけ光ってる。優しい色だよ」
「光ってる……? ほんとうに?」
私の言葉に、太陽くんは茫然とした。