紫苑さんが去ってしまうと、部屋の中は静まり返った。

西の窓から差し込む夕日が、眠る太陽くんの顔を赤く染める。



生きてるんだよね? このまま、目が覚めないなんてことはないよね?



不安に駆られて、私は太陽くんの頬に手を伸ばした。

そっとふれた肌は温かくて、首元に手を置くときちんと脈打っているのが分かる。


うん、良かった。ちゃんと、生きてる。



「良かった。生きてる……よかったぁ」



太陽くんが生きていることに安心して、思わずそう呟いた、その時だった。

太陽くんの身体がピクリと動いて、それから、ゆっくりと彼の目が開いた。



「月乃……ちゃん?」



私の姿を確認して、太陽くんが名前を呼ぶ。

だけど、私は返事を返すことが出来なかった。



太陽くんの意識が戻って、彼の心の色が見える。

その色は、ほとんど透明に近い、淡い光を放つ白。

あれだけ淀んでいた太陽くんの闇が、綺麗さっぱりと消えていたのだ。




ぽろぽろと、涙が零れた。

もう太陽くんは、闇に囚われていない。