「夢魔って知ってる? 俺はその男性型のインキュバスってやつ。いわゆる下級悪魔の一種だよ」
「インキュバス――悪魔っ!?」
春日くんの口からでた、あまりにファンタジーな単語に私は思わず目を見開いた。
「雨夜さんなら信じられるんじゃない? 不思議な力を持っていて、俺の心の色っていうのも見えていたんでしょ?」
春日くんの後ろには、混沌とした闇のオーラが見えている。
だから、よほど性根の悪い、犯罪者のような男なのだろうと思っていたのだ。
だけどまさか人間じゃないなんて、流石に予想外である。
「ほ、本当に悪魔なの? 人間じゃあない?」
「そうだよ。分かりやすく翼を出してあげようか?」
そう言うと、春日くんの背中から蝙蝠のような黒い大きな羽が生えた。
まさしく悪魔を体現するようなその姿に、私は思わずつぶやいた。
「うわ、似合う」
「本当に? クラスの女の子には、よく天使みたいって言われるんだけどなぁ」
春日くんが天使だと?
そう見えるやつはきっと、目が節穴なんだ。
外面だけは異常にいいけど、春日くんの笑顔は嘘くさい。
天使だなんてとんでもない。