紫苑さんが真面目な顔で私の目を覗き込む。

大事なことなのだと分かって、私は仰々しく頷いた。



「それじゃあ、始めるぞ。コイツの手を握れ」



紫苑さんの指示に従って、私は緊張しながら太陽くんの手を握る。

上手くできるだろうか。ううん、上手くやらなくちゃいけない。

私が失敗して、苦しくなるのは太陽くんなんだ。だから、絶対に成功させなくちゃ。



私が緊張していると、太陽くんの太い指が私の指に絡んで、きゅっと恋人のようなつなぎ方をした。



「大丈夫だよ、月乃ちゃん。月乃ちゃんの霊力なら、きっと俺は苦しくない」



なんの根拠も無いだろうに、太陽くんはそう言って、柔らかく笑って見せた。

その笑顔を見て、勇気が出た。大丈夫、きっとうまくいく。



「始めるね」



私はそう言ってから、太陽くんに向かって霊力を流し始める。

心臓から腕へ、腕から指先へ、そして、指先から太陽くんの指へ。

太陽くんの中に入った途端、霊力は抵抗にあうみたいに動かしにくくなる。



「そのまま、コイツの心臓に向かって力を流せ」



私の隣で紫苑さんが魔力を操る気配がする。

だけど、そっちに意識を割いている余裕なんてなかった。

言われた通り、私は太陽くんの心臓をめがけて必死に霊力を操作する。



「……っ!」



太陽くんの口から、微かに苦痛の声が漏れた。

辛いのだろうか。動揺しそうになる気持ちを落ち着けて、じっと力を流し込む。