紫苑さんの言葉に、私は目を瞬いた。

そりゃあもちろん、太陽くんが無事に人間に戻れるならなんだってやる。

だけど、私なんかで良いのだろうか。



「もちろん、協力するよ! でも、私は霊力の扱いをやっと少し覚えたばかりなんだけど」



私の力が必要ならば、いくらでも貸す。

だけど、私がやることで、失敗したりはしないのだろうか。

霊力の扱いに慣れた、プロに頼むのが一番なんじゃないか。



「良いんだよ。やることは別に難しくねぇ。自分の霊力を動かすくらいは出来るんだろ?」

「う、うん。それくらいなら」

「じゃあ、問題ねぇよ。てめぇはただ、コイツに向かってひたすら霊力を流し続ければいい」

「それだけでいいの?」

「ああ。あとは俺様がどうにかしてやる」



確かに、それくらいなら私でも出来るだろう。

だけど、そんなことで本当に太陽くんが人間に戻れるんだろうか。



「太陽くん、本当に大丈夫なの? 危険はないの?」

「うん。紫苑さんが手伝ってくれるなら、大丈夫だと思う」



だと思う、なんていう不確かな確率に賭けるのは嫌だ。

万が一にでも、私は太陽くんを死なせたくはないのだ。



「私は、太陽くんが人間じゃなくても気にしないよ? 危険を冒して死んじゃうくらいなら、今のままの方が良い」

「ありがとう、月乃ちゃん。でも、俺が人間になりたいんだよ」



太陽くんは強い目をして、きっぱりとそう言った。

太陽くんがそれを望むなら、私は反対なんて出来ない。



「おいクソ女。俺様が手伝うって言ってんだ。失敗なんかさせるかよ」



不服そうに紫苑さんが私を睨む。

たしかに、紫苑さんはすごい魔力の持ち主だと思うけれど、信用できるかは別の話だ。

太陽くんは信用しているみたいだけど、私はわりと彼に酷い目に会わされている。



「大丈夫だよ、月乃ちゃん。それとも、俺の言葉は信用できない?」

「――ううん。太陽くんが言うなら、信じる」



紫苑さんのことは信用できないけど、太陽くんは信用できる。

太陽くんがそう言っているのだから、きっと、信じて良いのだろう。



「けっ、まぁいい。とにかく、クソ女の霊力を使ってコイツを人間に戻す。が、今は太陽に精気をやったばかりで力が足りてねぇだろう。だから、3日後にまたここにくる」

「分かった。3日後に太陽くんを人間に戻すんだね?」

「ああ。だからクソ女はしっかり休んで、力を回復してろ。好きな男と同棲中だからって、サカってこれ以上精気を渡すんじゃねぇぞ?」

「わ、わかってるよ!!」



私が顔を真っ赤にして言うと、太陽くんが気まずそうに目を逸らした。