「人間に戻るのって、危険だって聞いたよ! 失敗したら死んじゃうって!」


私だって、太陽くんが人間に戻ってくれると嬉しい。

だけど、死んでしまっては意味がないのだ。

そんな危険を冒すくらいなら、今のままの方が良い。

だから、私もその方法があると聞いていても、その話を太陽くんにはしなかった。



「だから、俺様が協力するんだよ。普通にやったら死んじまう可能性は高いが、俺が魔力で太陽の魂を保護する。そうすれば、死んじまうリスクはほとんどねぇ」

「え……?」



いきなり言われた提案に、私の頭が混乱する。



太陽くんに危険が無いなら、そりゃあ大歓迎だ。

でも、なんで紫苑さんがそんなにも協力的なんだろう。

太陽くんが人間に戻るなんて、絶対に反対しそうな人なのに。

それに、今、太陽くんのことを橙じゃなくて、太陽って呼んだ?


「私が寝ている間に、何があったの?」

「うん、まぁ、ちょっとね」



太陽くんが困ったように苦笑する。



「俺様のことはどうでもいいんだよ。でまぁ、肝心なのが方法だ。コイツを人間に戻すには、霊力が絶対に必要になる」



紫苑さんが真面目な話を始めたので、私はベッドの上で背筋を正した。



「霊力が必要なら、ライアンさんに頼めば協力してくれると思うけど」



ライアンさんは太陽くんを人間に戻すことに乗り気だった。

夢魔が一人いなくなるなら、喜んで協力してくれるだろう。

そう思って言ったのだけど、紫苑さんは思い切り顔を顰めた。



「はぁ? 冗談じゃねぇぞ。誰が退魔師なんかに頭を下げるかよ!」

「え、でも……」

「霊力ならてめぇが持ってるだろうが。コイツを人間に戻すのに、協力しねぇとは言わせねぇぞ」