『紺は消えて、緋色は行方不明。黄色の野郎は変わっちまった。昔からの知り合いは、皆、いなくなっていきやがる』
『仕方がないよ。僕らは不老だけど不滅じゃあない。長い時間を生き続けるのは辛いからね』
『今から消えるてめぇが、残る俺様にそれを言うのかよ。本当に自分勝手だな』
紫苑さんはそう言うと、コツンと軽く手の甲で俺の頭を叩いた。
『分かったよ、橙。俺様が手伝ってやる。――感謝しろ』
『うん。ありがとう、紫苑』
彼のその言葉を最後に、すぅっと世界が浮き上がる。
身体にまとわりついていた魔力が消えて、視界がクリアになっていった。
身体の自由が戻ってくる。
紫苑さんが、複雑そうな表情で俺を見つめていた。
「おい太陽、今の会話、聞こえていたか?」
「え、ああ」
「なら、説明は要らねぇな。俺様が、お前を人間に戻すのを手伝ってやる」
それで良いのかという言葉が喉元まででかかって、ぐっと言葉を飲んだ。
彼の決意を汚すべきじゃないと感じたからだ。
だから代わりに、俺は彼に頭を下げた。
「ありがとう、紫苑さん」
紫苑さんはふんを鼻を鳴らして、横を向いた。