彼の言葉に、紫苑さんは駄々をこねるように首を左右にふった。


『それが一番いい方法だって分かんねぇだろうが。融合が中途半端だからなんだ? こいつの身体は完全に悪魔になってる。お前を消し去ったからって、無事でいられる保障なんてねぇ』

『だから、僕が君に話を通してるんだよ、紫苑。君が手伝ってあげれば上手くいく。霊力で僕を浄化する間、君がその魔力で太陽の魂を守ってあげればいいんだ』

『は……? ふざけるなよ! お前が消える手伝いを俺様にしろって!?』



あっさり言った彼に向かって、紫苑さんは激高した。

紫苑さんは同族が傷つくことを一番嫌う。

彼もそのことを知っているだろうに、なかなか酷い提案をするものだ。



『そうだよ。君は僕の命を繋ぎとめたんだ。だから、最後まで見届けてよ』

『俺様は、そんなつもりでお前を生かしたんじゃねぇ。時間が経てば癒えるかと思ったんだよ。橙がまた受肉したって知って、喜んだのに……』



紫苑さんが辛そうに顔を歪める。彼の表情をみて、ずきんと胸が痛んだ。



『紫苑、ごめんね。君と生きてあげられなくて』



紫苑さんは顔を歪めて、それから諦めたように大きく息を吐いた。

眉をハの字にして、悲しい顔で笑う。



『てめぇは自分勝手だ、橙』

『仕方がないよ。僕は悪魔だからね。それに、君だって自分勝手でしょ?』



口が勝手に笑みの形を作る。と、紫苑さんが泣き笑いのような顔を作った。