紫苑さんに聞けと言っていたけど、あの人は、俺が人に戻りたいと思っていると知れば怒るだろうな。
紫苑さんは面倒見がいい人だ。
今まで何かと俺を気遣ってくれたし、世話を焼いて心配もしてくれた。
だけどそれは、俺が夢魔だからだ。
その証拠に、紫苑さんは俺を太陽とは呼ばず、夢魔の名前である橙と呼ぶ。
あの人にとって俺は橙で、春日太陽ではないのだ。
紫苑さんは仲間に甘い。だが、仲間以外には容赦しない。
人間に戻るということは、悪魔である橙を殺すことだ。
紫苑さんが協力してくれるとは思えなかった。
だけど俺は……人間に戻りたい。
俺はぎゅっと拳を握って魔力を操った。
紫苑さんに教えてもらった、夢魔間の通信を使って紫苑さんに呼びかける。
すぐに反応があって、紫苑さんが転移で現れた。