月乃ちゃんが眠ったのを確認して、俺は食器の片づけをした。

月乃ちゃんに無理をさせないよう十分気を付けていたのに、それでも昨夜は彼女の精気を食べ過ぎてしまった。

ずっと飢餓状態でのご馳走だ。

意識してセーブしていなかったら、際限なく欲して彼女の命まで危うくしてしまっただろう。



食器を洗いながら、カウンター越しに彼女の寝顔を眺める。

月乃ちゃんがそこにいるというだけで、胸の奥に光が差したような、温かい気持ちになれる。

おそらく、この気持ちが幸せというのだろう。

自分がこんな穏やかな気持ちを持つ日が来るなんて、思ってもいなかった。



月乃ちゃんが好きだ。誰よりも、何よりも、大切にしたい。

この幸せを手放したくない。


今この瞬間が幸せであるほど、胸の奥で不安は膨らんでいく。



――俺は悪魔だ。



この身体はもう、普通の人間とは違う。

食事を必要としないし、精気がないと生きていけない。

それに、老いることもなければ、寿命で死ぬこともない。