春日くんが何者かなんて、そんなのは知らない。
私がおそるおそる頷くと、春日くんはにぃっと笑みの形に口を歪めた。
「そっかぁ、気づいたわけじゃあないのか。でも、残念だね。俺、雨夜さんに興味持っちゃった。――だから、このまま逃がしてあげない」
春日くんはそう言うと、私の首筋にそっと触れた。
チリッと首に違和感が走る。と、同時に、とてつもない眠気がやってきた。
なにこれ、眠たい……目を開けていられない。
「おやすみ、雨夜さん。夢の中で会おうね」
ぐらりと傾く身体を温かいものが受け止める。
最後に見えたのは、春日くんの背後にうごめく深い闇の色だった。