太陽くんは切なそうな声でそんなことを言う。

馬鹿だなぁって思いながら、私は太陽くんの頭をそっと撫でた。


「何一つ与えられないって、そんなことないよ。ちゃんと、一番大事なものをもらってる」

「一番大事なもの?」

「うん。だって、私、太陽くんと一緒にいると幸せだなぁって思うもん。こんな気持ちになれるの、太陽くんだけだよ。だから、何も与えられないなんて、そんなことないんだよ」



私がそういうと、太陽くんは顔をくしゃくしゃにした。



「そんなの、俺だってもらってる。俺の方がもらい過ぎてる。月乃ちゃんがいなかったら、誰かを好きになるとか、幸せだとか、そんな気持ち絶対に分からなかった。こんなにも辛くて、苦しくて、でもどうしようもないほど愛しい気持ちなんて、絶対に分からなかった」


太陽くんはぎゅうぎゅうと私を抱きしめる。

私は、太陽くんのさらさらの黒髪に指を通した。

この髪も、形のいい鼻も、太くてゴツゴツしてる指も、太陽くんを構成しているすべてが好きだ。

触れる先から、愛しい気持ちが溢れてくる。



「太陽くん、ずっと一緒にいよう。太陽くんが私がいないとダメだっていうくらい、私も、太陽くんがいないとダメなんだ。太陽くんがいないと、寂しくておかしくなっちゃう」

「俺は、悪魔だよ。俺と一緒にいると、月乃ちゃんまで危険な目に会うかもしれない」



不安そうに揺れる太陽くんに向かって、私はにっこりと笑った。



「大丈夫だよ。私だって、普通の人間とちょっと違うみたいだもん。大したことはできないけど、霊力の使い方だって覚えたんだよ? 凄いでしょ!」


私が胸を張ると、太陽くんはプッと笑った。


「うん、本当にすごいよ。月乃ちゃんは、すごい」

「そうだよ、私は凄いんだから! だから、安心していいんだよ、太陽くん」

「……ありがとう」