春日くんがゆっくりと私に近づいてくる。このままだとマズイと、第六感が危険を告げた。

私は身体を反転して、再びドアにかじりつく。

バンバンとドアを叩いたけど、ドアはビクとも動かない。



「うーんやっぱり、かかりが悪いね。雨夜さんって普通じゃないんだ」

「かかりが悪いって、何?」

「俺の術。さっきから君が動けないようにしているんだけど、なかなか効かない」

「術……?」



春日くんが何を言っているのか分からない。

私が首を傾げると、春日くんはふぅんと小さく唸った。



「コッチの知識は無いんだ。そんなに霊力を垂れ流しているのに、よく今まで無事でいれたよね」

「霊……力?」

「漫画や小説の話をしてるわけじゃないよ。雨夜さん、他の人と違うところがない? 例えば、普通の人には見えないようなものが見えたりだとか」



言い当てられてドキリとした。

確かに私は、その人が持ってるオーラが見える。

だけど、それは誰にも言ったことが無い。


「な……んで?」

「ああ、そういう反応するってことは、やっぱりそうなんだ。それが原因で、俺のことを怖がっていたの?」



言い当てられて、私はおそるおそる首を縦に振った。



「ひ、人の心の色みたいなのが見えるの。春日くんの色は、普通の人と違っているから、怖くて」

「ということは、俺が何者なのか気づいているわけじゃあ無いんだね」