私はライアンさんの後ろに続いて寺を出て、車に乗り込んだ。

事件が起こったのは、そう遠くない場所にある繁華街らしい。

ネオンがギラギラと輝く店の隣にあるパーキングに駐車して、ライアンさんは車を降りた。



「女性が見つかったのはこの辺りだ。夢魔の術が使われたなら、痕跡が残っているはず。見えるかい?」



ライアンさんに尋ねられて、私は注意深く周囲を見回した。

しかし、ライアンさんの言う痕跡が分からなかったので首を左右に振る。



「霊力を目に集中して、周囲をよく見てみるといい」



ライアンさんに言われて、私は体内の霊力を目のあたりに集中させる。

すると、繁華街の一角に黒い靄のようなものが漂っているのが見えた。



「あそこに何かある?」

「よくできました。あれが、術の痕跡だ」



ライアンさんは私を褒めると、靄の残る路地へと歩く。

よくよく見ると、靄から一本の糸のようなものが、まっすぐどこかへ伸びているのが見えた。


「この糸を辿れば、術を使った相手にたどり着く。時間たつとこの糸は消えるから、悪魔を見つけるならいかに早く術の痕跡を見つけるかが大事なんだ」


退魔師の心得のようなことを喋りながら、黒い糸をたどって歩く。

糸はグネグネと曲がって、人気のない住宅街にある小さなマンションの中へと入って行った。