ライアンさんに連れてこられたのは、一軒の小さなお寺だった。

白人のライアンさんとお寺はずいぶんミスマッチで、私は目的地がここで良いのか何度も確認してしまった。



「ここの住職とは知り合いなんだよ。君の修行をしたいって事情を話したら、一室貸してくれるって」

「お寺って仏教ですよね。大丈夫なんですか?」

「よく混同されるけど、僕はキリスト教のエクソシストじゃないよ。信仰としてはキリスト教に近いけど、立場でいえば無所属だから」



ライアンさんも、正体がよく分からない人だ。

どこの国の人で、どうして日本にいるのか聞いてみたい気はしたけど、ライアンさんは明らかに学生な年齢の私に何も聞かない。

親はどうしているとか、学校はどうだとか、そんな当たり前の質問を一切してこないのだ。

そんな調子だから、私もライアンさんの事情を質問できずにいた。



お世話になるお寺の住職さんに挨拶をしてから、修行とやらが始まった。

自分の中の霊力を感知するのが基礎。それができるようになったら、今度はそれを自在に動かす練習を繰り返しさせられる。

ライアンさんが先に手本を見せてくれるから分かりやすくて、2日もあれば霊力を動かすくらいはできるようになっていた。