「人間に戻せるって、そんなことが可能なんですか!?」
思ってもいなかった言葉をかけられて、私は思わず椅子からお尻を浮かせた。
私の勢いにライアンさんは落ち着けと小さくたしなめる。
私はそれで改めて椅子に座りなおして、早く話を聞かせてくれとライアンさんをせっついた。
「あくまで、可能性があるというだけの話だ。彼が融合した悪魔の部分を取り除けば、人に戻る……かもしれない」
「不確定な話なんですか?」
「過去にそういう例はあった。だが、成功よりも失敗例の方が多い。悪魔との融合が進んでいれば引き剥がせないし、引き剥がせたとしても、魂が汚染されていたら死体しか残らない」
「失敗したら、死ぬかもしれないってことですか?」
「そうだ」
私はぎゅっと眉根を寄せた。
もし太陽くんが人間だったら、一緒に居られるかもしれない。
だけど、万が一でも太陽くんが死んでしまうかもしれないなんて、そんなのは嫌だ。
太陽くんが死ぬくらいなら、悪魔のままでもいい。
どんな太陽くんでもいいから、生きていて欲しい。
「そんなの、試せません」
「人間になって欲しくはないのか?」
「そういう気持ちはあります。だけど、それよりも彼が死ぬかもしれない方が嫌です」
死んでしまったら、側にいることもできないのだ。
だけど、悪魔ならば一緒にいることはできるかもしれない。
茨の道でも、可能性はゼロではないのだ。
「だけど、彼はどうだろうね。人間に戻りたいという気持ちがあるんじゃないか?」
「それは……」
どう、なんだろう。
人間に戻れるなんて思いもしなかったから、考えたこともない。
もし人間に戻れるなら、太陽くんは戻りたいんだろうか。
「まぁ、何にせよ君はもう少し霊力を自由に使えるようになった方が良い。使える力がふえれば、選べる選択の幅も広がる」
「分かりました。あの、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく」