「それは、その夢魔の言葉が正しい。人と悪魔が一緒にいて、上手くやれるとは思えない。だが――そんな風に言えるなんて、その悪魔はずいぶんと人間くさい奴だったんだな」
「人間くさいのなんて、当たり前ですよ。だって、ちょっと前までは人間だったんですから」
「なに?」
私の言葉に、ライアンさんの表情が変わった。
「まて、そいつは元人間なのか? ちょっと前っていつだ。いつ、悪魔になった!?」
デーブルに身を乗り出すようにして話すライアンさんに驚く。
「え……1年前だって、そう言ってましたけど」
「1年か、微妙だな」
ライアンさんは顎に手を当てて唸る。
「意識はどうだ? その悪魔は人としての意識と、悪魔としての意識、どっちが強い?」
「分からないですけど、自分は悪魔だって言ってました。……でも」
「でも?」
「悪魔と融合したとき、その悪魔の記憶は引き継がなかったって言ってました。だから、人間という意識のほうが強いような気もします」
「そうか……」
ライアンさんは低声で唸った。
様子がおかしくなったライアンさんを見て、私は少し不安になる。
「あの、元人間だったら、何かあるんですか?」
「期待させて、絶望させることになるかもしれない。絶対にできると断言できないし、むしろできない可能性のほうが高い。だが――」
そう言って、ライアンさんは私の目を見た。
「その悪魔を、人間に戻せるかもしれない」
ライアンさんの言葉に私は息を呑んだ。