はなびら

怪我がまだ完治していない私は、半日マネージャーをすることになった。

もう半日は体力が落ちないようにする為に、トレーニングルームに行ってエアロバイクを漕いだり、筋トレをしたり、とにかく怪我でもやらなければいけないことはたくさんある。

トレーニングルームでの練習を終えた私は外履きに履き替えグラウンドへと向かう。

すると、途中の水道のところで顔を洗う樋山先輩に遭遇した。

とっさに近くの物陰に隠れる。

なんだか悪いことをしていないのに、悪いことをした気分だ。

ひょっこり顔を出すと、顔を洗い終わった先輩は顔を拭くタオルがなくて困っていそうな雰囲気だ。

私の両手には、体育館履きと水筒とタオル…がある。

決意を固めた私は、ゆっくり足音を立てないように樋山先輩の背後へと回る。

そして樋山先輩の肩をつんつんと人差し指でそっと触れた。

樋山先輩は不思議そうに振り返り、肩を触った犯人が分かるとうわっ!と叫びながら後ろへ少し飛びのいた。

「あ、大きい声出してご、ごめん。

ど、どうしたの?」

なんでそんなに私にびっくりしたのか聞きたいところだが、ここは我慢した。

「あの、もし良ければタオル使ってください。」

斜め下を向きながら不器用にタオルを樋山先輩の前に差し出した。

私の顔は今ものすごく恥ずかしい顔をしている気がする。

「あ、ありがとう。けど俺の顔、汚いよ?」

樋山先輩はポカンとした顔で真面目に答えた。

その顔を見た私は緊張の糸がプツンと切れて、思わず吹き出してしまった。

「ふふっ、汚い顔ってなんですか。

大会で運んでくれたお礼ってことで、心置きなく使ってください。」

「いやあ、ごめん、助かる。

今度洗って返すわ。」

はいっと言ってタオルを使う先輩を横目に見ながら、私は足早にグラウンドへと再び向かう。

緊張してどうにかなってしまった顔を両手で覆い、ほっぺの横へとスライドさせる。

冷えた手がいい感じにほっぺの熱と中和していく感じがした。