「奈央、どうした?」

今日何度かそう聞かれた気がする。

「ん、なんでもないよ」

私は決まって、笑顔をつくってそう答えた。


今はまだこんなだけど、

……きっといつか、時間が解決してくれるときがやって来る。

そう信じて、耐えてみるよ。

文化祭の一日目が終わった帰り道。結人くんといつもの歩き慣れた道を歩いていた。

帰り道の結人くんは、文化祭のときよりも口数が少なくて心配になった。


夕日に照らされてる結人くんの顔は切なげで、私なりに明るく話しかけた。

「受験勉強ばっかりで疲れてたけど、今日楽しかったから疲れも吹っ飛んだよ。結人くん、誘ってくれてありがとね」

結人くんの足が止まって、やっと視線が重なった。


「俺も、文化祭一緒にまわれて楽しかった」

……いつもの優しい笑顔じゃない。

その顔は切なげで、無理に笑っているように見えた。


「結人くん、どうかした?」

心配になって尋ねた。

「最後に、奈央と一緒に思い出が作れてよかった」

何秒かの間、時が止まったように感じられた。

何を言ってるのか理解できなかった。