「…………」 わたしが黙ると、耳元に春花(はるか)ちゃんの唇が近づいてきた。 「…明日のマラソンで私が勝ったら席譲ってね」 負けたら席替えの前に恋が終わってしまう。 最悪、高校にも通えなくなるかもしれない。 それでも、わたしはこの相可(おおか)くんの隣の席を守りたい。 春花(はるか)ちゃんがコソッと言うと、わたしは答えた。 「…分かった」 春花(はるか)ちゃんと約束してしまった。 もう、負けられない。