髪、綺麗だねって褒められた事も

あの約束も




「………紀恵さん?どうしました?」




またその場に止まってしまった私。



そんな私に気がつくと、少し前を歩いていた颯太さんが振り向いた。




スーツが似合っている彼。



そんな姿を見てしまえば




(颯太さんはもう大人なんだ。)
って気づかされる。




まだ高校生の私。
社会人の彼。




もし私が颯太さんを好きだとしたら?




この年齢の差は大きい。


颯太さんからして私はまだまだ子供。




あと少しで私も颯太さんに近づけるのに。




(10年ぐらい間があったんだ。それぐらい間があれば颯太さんにもいろんな出会いがあった筈…)




あの記憶も颯太さんにとっては小さいものになってしまったんだと思う。




「………っ!紀恵さん!?」




その場にしゃがみ込む私。
そんな私に颯太さんが駆け寄る音がする。




(なんで今、私、泣きそうになってるの…)




これから、どうすればいい?




今日初めて

自分の気持ちに迷いが出来た。