「ちょ、ちょっとコンビニにでも行ってみよっかな~なんて…」
「何も買わなかったんですか?」
「い、いいのがなくて…」
咄嗟に嘘をついた。
(バレるなコレは…)
そう思っていたのに、颯太さんは何も疑おうとはしなくて
「そうですか。でもこれからはこんな時間に出歩くのはダメですよ。危ないですからね。」
いつも通り、母親のような対応で返してくれた。
顔をクシャッとさせて笑う颯太さん。その笑顔は昔と変わっていない。
(颯太さん、覚えてるのかな…)
颯太さんの横顔見た時、フトそんな事を思う。
つい最近の私みたいに昔の事なんて覚えてないかもしれない。
颯ちゃんと呼んでいた幼い私。
突然引越してしまった彼。
だけど彼はまた突然現れた。
常にスーツ姿で私より背丈も大きくて大人になった彼が今は私の隣にいる。
「………颯…ちゃん」
…颯太さんは私の事覚えてる?