「これが、紀恵。」




お母さんが指差す先には、赤いランドセルを背寄った私の姿。




「そしてこれが…」




そんな私の隣にいる男の子。




「颯ちゃんよ」

「………えっ?」




言われた瞬間、目を疑った。




学ランを着ていて、ニッコリと笑う男の子。




「え?嘘でしょ」

「嘘じゃないわ。ほんとよ」

「なんで一緒に映ってるの?」

「ほんと何も覚えてないのね」




呆れたように微笑むお母さん。
覚えてるもなにも、記憶にすらない。




「本当なの?それ。これが颯太さん?」




もしかしたらウソかもしれない。
なんてまだ疑う私に、




「これが紀恵。これが島崎。間違えない」




お父さんは真面目な顔でそう言うから




「ウソでしょ…」




信じるにも信じきれない。


だがその顔で言われては本当なのだろう。