「ちょっと、ほんといい加減に…」



放してもらおうと

私がその手に触れた瞬間



「っ!」


颯太さんの手

右手が



「な、なにっ」

ゆっくり私の唇に触れた。

優しく愛撫されるかのように撫でられて



今にも心臓が弾けそうなくらい

ドキドキは収まらなかった。



やだ、なに、これ

まさかキス…される、の?



身体が固まって

条件反射のように目を閉じてしまう私


ギュッ、と力強く。



だけど

「ちゃんとリップクリーム塗ってますか?」

「……ん、え?」

うっすらと目を開ける



「リップクリーム」

リップクリーム?


「あ、いや塗ってない…」

「ちゃんと塗って下さい。荒れてますよ」

「……はい」



キス、ではない。

それを理解した途端、恥ずかしっ!と身体が熱で帯びる