「っ……、だったら、あの女の人は…」
「女の人?」
「…見たんだもん。今日、駅の改札で颯太さんが綺麗な女の人と腕を組んで歩いてるところ…。会話も聞いた。ずっと前から会ってる、そんな感じがした」
すると颯太さんは「あー…」と顔を歪めて
「あれは過去に接客した時のお客さん。数年経つというのに未だに俺の顔を覚えていたらしくて。面倒だし適当にあしらうように返事したんだよ。今でも涼のとこの顧客らしいし、当たり障りない程度にね。もちろん今後会うつもりなんて一切ない。」
「あと、俺はあの日から一度も接客はしてないよ」
「信じてくれる?」最後にそう付け足した颯太さんの言う『あの日』とは、二度と接客はしないと言っていた日のことだと思う。
「そっか…そうだったんだ……」
ホッと心が安心する感覚。
やっぱり、ホストクラブで出会った人だったんだ。
良かった……恋人とか、そんなんじゃなくて…。
「不安にさせてごめんな」
「ううん…私も適当なこと言ってごめん」
その事実を知らずに「別に颯太さんが誰と恋愛しようが勝手だし」なんて、思ってもいないことを言った。
「私も颯太さんが好きだよ。好きだから……誰かに取られたくないって、焦ってた。早く結婚して私のものにしたいって……」
たったそんな理由で『結婚』を考えるなんておかしいよね。
だとしても、
その繋がりには惹かれてしまうんだ。
「………………」
颯太さんは何も言わずに
再び私との距離を縮めると
「っ、」
今度は額へキスを落とした。
そして、ふわりと頭を撫でられる。
「抱いていい?」
「…へっ!?」
「紀恵が可愛いことばかり言うから抱きたくなった。」
「こ、ここで…?」
人気は無いし、
見られることはないと思うけど…
「俺はここでもいいけど?」
オドオドとする私を見て、颯太さんは愉しげな声といいニヤリと口角を上げて意地悪な顔をする。
「だ、ダメ!絶対ダメ!」
「そっか、残念。早く抱きたいのに」
「っーーーー!!」
顔を赤らめる私を楽しむように見つめ、
颯太さんはそのまま車を走らせて
どこか急ぐように家へと向かった。



