執事的な同居人






「仕上がってますよ~!少々お待ちください」

「はい。よろしくお願いします」





店員さんは裏の部屋へと行ってしまうと




少しの間2人っきりの時間ができて。





「………本当は、去年渡すつもりだった。けどあの時は大きな案件ばかり回されていたからこの事に時間が取れなくて。」





仕事の話をする颯太さんに
私も去年のこの時期を思い返した。




確かに去年のこの日、颯太さんずっとバタバタしていたっけ。


仕事がやけに忙しそうで、帰ってくる時間も遅く、涼さんのお店を手伝える暇さえもないような。



そんな忙しい月だったにも関わらず


そうであっても、あの日だけは急いで帰って来てくれたんだ。



花束と、2人じゃ食べ切られないワンホールのケーキを持って。



私の20歳の誕生日であるその日だけは、
例え仕事があろうとも急いで帰ってきてくれたんだ。





「豪勢に出来なくてごめんね。」





申し訳なさそうに、額にかいた汗を拭って。




豪勢になんて頼んでないよ。


花束とケーキ、それから颯太さんが急いで帰ってきてくれたこと。その想いが十分に誕生日プレゼントなんだよ。





「だから、去年出来なかったことを今年はしたくて」





颯太さんの声に過去の思い出から引き戻された私は、やっと気づく。





「お待たせしました~!こちらがご希望された商品になります」





店員さんが小さな箱に入れて持ってきてくれた物。



それが颯太さんの手に渡ると





「紀恵」





私の左手を優しく掴み、





「1年遅いけど」





ゆっくりと薬指にはめられたそれは、





「20歳の誕生日おめでとう」





やっぱり颯太さんが選んだだけあって完璧なサイズだ。





「これっ…」

「うん。一応、仮にってことで」





その言葉に『結婚』の文字はないけれど




ただ文字がないだけで



私の指に付けられた
キラリと輝くシルバーリングが


私達の未来を約束する証。






想像もしていなかった物が今、

私の薬指にある。