執事的な同居人






ずっと黙って私を見ていた颯太さんが口を開く。





何を言われるんだろう。怖いな。


怖いけど……ちゃんと聞かないといけない。





颯太さんに掴まれていない方の手で覚悟を決めるかのようにベッドシーツをギュッと握った。





颯太さんから返ってきたのは、


その事に対する否定でも肯定でもなくて





「仕方がないか…」





観念したように息を深く吐きながらそう呟いたのだ。




そして「え?」と聞き返す暇もなく、颯太さんは私の腕を強く引いて立ち上がらせた。





「ちょっとついてきてくれる?」

「ど、どこに…」





その質問に対する返答はなく、颯太さんは私の腕を引いてズンズンと玄関へ歩いていく。



慌てるように靴を履いて私もその後をついていくのだけど、行き先が分からないのだから不安はある。





「乗って」





そんな私を車に乗せると、颯太さんは未だ無言で車を走らせた。





(何処に向かってるんだろう…)





流れゆく景色は、光り輝く夜の街。



ただ今の私は綺麗だなっと考える暇もなく、不安ばかりが募っていく。





(仕方がないって、どういう意味なんだろう。隠し事がバレて観念した?てことは……これからあの女の人の所に?実は……って、私に紹介しようと?)





考えれば考えるほど『嫌だ』の文字が身体中を支配する。





「ーーーーっ」





心の中では何度もその言葉を叫んでいるのに、彼を目前にしては喉から先に言葉が出ない。



口を開けては閉じてを繰り返し、少し経って私は再び前へと顔を向けると、その行為をやめた。



何を言ったって、きっと変わりはしないこの先の未来。





(どこで間違えたんだろう、)





ワガママで、嘘つきで、子供っぽくて、めんどくさくて……そんな私に呆れたのかな。



だとすると、



こうやってドライブをすることも

横顔を眺めることも



今日が最後なのかもしれない。





「っ……」





そう思うと、とても綺麗なこの夜景がぼやけて見えた。