「結婚って……」
ズキンッ
まただ。
私がこの話を持ち出すと
颯太さんは決まって困った顔をする。
「……あのさ、紀恵」
それほど結婚に興味がないってこと?
それとも、他に気になる人がいるから
そーゆー話はしたくない?
颯太さんは完璧な人。
だったら
「隠し事だって完璧に隠し通してよ…」
私がそう言えば、颯太さんは何かを言いかけて「っ、」と口を噤んだ。
(あっ…)
その反応を見て、私は気づいてしまう。
やっぱり、そうなんだ。
隠してたんだ、あの人との関係を、ずっと。
だから結婚の話は避けるんだ。
って。
「そっ……か」
胸が痛い。苦しい。
「……そうだったんだ」
颯太さんはやっぱり完璧だと思う。
「結婚すると、他の人と恋愛楽しめないもんね」
この日までずっと
私はその事実に気づけなかったのだから。
…自分で言っといて悲しくなってくる。
私の言葉に颯太さんは「は?」と、また困った顔を見せた。今度は眉根も寄せて、呆れたように。
「さっきから何言って…」
「いいよもう、分かってるから」
「紀恵」
「別に颯太さんが誰と恋愛しようが勝手だし」
途端。
「紀恵」
耳元に響く大きな声。
グッと腕を引っ張り上げられると、目の前には颯太さんの顔があった。
「っ、」
ち、近い…
こんな距離初めてでもないのにドキドキしてしまうのは、紛れもなく颯太さんの事が好きだから。
そんな私は今、
彼の瞳にどう映っているんだろう。
子供っぽくて面倒な女?
ワガママな女?
だとしたら、こんな私なんて───



